全社的な戦略リーダーとしてのCHRO
今日の(そして未来の)CHROには、多岐にわたる役割が求められている。当社の調査では、CHROの役割の43%が従来の人事の職務範囲を超えた責任を含んでいることが明らかになった。
最も成功している人事リーダーは、経営視点に基づく信頼性・戦略的思考・組織的洞察の3つを兼ね備えている。今や、人材や文化に関する議論に参加すれば十分とされた時代は過ぎ去り、テクノロジー、法務、資本配分についても知見を示す必要がある。これは、人事の本来の役割が軽視されているというよりも、従来の職務に加えて戦略的なコミットメントと目標への対応が求められるようになったという方が正確だろう。
例えば、取締役会で長期的なオペレーティングモデルに関する議論に加わる一方で、社員のタウンホールミーティングでは最新の福利厚生ポリシーについて説明する、といった役割の柔軟な切り替えが求められる。従業員に影響を及ぼす法改正の動向に精通している必要があるのはもちろんだが、同時に業績に関する議論を主導し、業務効率化や成長につながる機会を特定する役割も果たさなければならない。
すなわち、今日のCHROはその役割を効果的に果たすため、これまで以上に多才な能力が求められているのである。
CHROに至るキャリアパス
CHROの職務内容が進化するにつれ、この役割を担う人材の職務経歴もまた変化している。当社のキャリアパス分析では、エンジニアリング、市場調査、IRといった人事以外の部門からCHROの役割に就任した人材が37%に上ることが明らかになった。
採用に関しては内部登用が好まれる傾向にあり、71%のリーダーが同組織内から昇格している。外部採用の場合は72%が女性である一方、内部登用では女性65%、男性35%と、男女比の偏りはやや縮小する。
予想に違わず、リーダーの多く(74%)は前職も人事部門に所属しており、そのうち49%は人事のトップとしての経験を有していた。74%のうち、76%は同じ業界の出身であった。
調査対象の101名の人事リーダーのうち、外部かつ異業種からの採用はわずか16名にとどまり、既存の枠を超えた候補者の採用にはなお慎重な姿勢があることが明らかになった。人事のスキルは以前から業界を超えて通用するものと見なされてきたが、外部から人材を求める際にも、即戦力となる候補者を好む傾向が根強く残っていることが窺える。
在任期間のダイナミクス
こうしたリーダーは、どのくらいの期間、そのポジションに就いているのだろうか。当社の調査によれば、平均在任期間は3.9年であった。興味深いことに、女性リーダーと男性リーダーでこの平均値に差はなく、経験年数の観点では性別によらずに公平な状況であることが分かった。
一方で、役割が拡大したCHROの平均在任期間は3.4年であり、役割が拡大していないCHRO(4.6年)と比較して短い傾向にあることが判明した。
この結果は、CEOのケースとは極めて対照的である。例えば、当社が最近実施した欧州のCEO交代に関する調査によれば、2025年に退任したCEOの平均在任期間は7.4年だった。2022年の8.8年から短縮したものの、依然としてCHROポジションに比べて大幅に長い結果となっている。
未来のCHROへの示唆
では、これらの動向は未来のCHROにとって何を意味するのか。
CHROを目指す人材にとって、将来のキャリアアップを見据えるうえで検討すべき事項が多いことは明らかだ。CHROの役割範囲と規模が変化する中では、成功に必要な事業への多面的な露出機会を得るために、従来のHRの領域にとどまらない経験を積むことが不可欠となっている。
しかし、こうした動きにはCEOも留意すべきである。CHROの職務範囲の広範さが明らかになった今、CEOは期待値を調整し、CHROを目指す候補者が自らの機能を統括するだけでなく、経営チームにおいて戦略的な資産として機能することを担保する必要がある。また、こうした変化が自社の経営幹部の体制や全体の組織構成にどのような意味を持つのかにも配慮する必要がある。
これらの優先事項と目標をどのように組み合わせて取り組むことが最適であるかは、引き続き議論が続いている。スペンサースチュアートは、今後発表を予定しているレポートで、欧州の主要CHROと共にこのテーマをさらに深く掘り下げる予定である。